魔女だったのか

不思議な体験をした。
そいつは、突然現れた。

夜名古屋で開かれる同友会行事に参加するため、夕方に河和口駅の上りホームで電車を待っていた。するとマナカも切符も使わずに改札口を無理やり通って来る変な女が居るではないか。そして近づいて来て私に話しかけた。「次の電車ん乗ればいい?名古屋行く、あたし」何だか日本語がタドタドしい。歳は20代後半か。化粧していない、貧乏っぽい。

「確かに次の電車に乗ればいいけど、普通だから時間かかるよ。阿久比駅で特急に乗り換えた方がいいよ」「はーわからん」「つまりね、まず次の電車でここから阿久比駅まで行くんだよ、そこで降りて少し待っていれば特急が来るから、それに乗れば早く名古屋へ着くよ。」「へー」私の言うことが、あまり理解できないらしい。「わかった、俺もこれから名古屋へ行くから一緒に行こうよ。」「ふー、ありがとう」

二人で電車に乗った。
「それにしても君、どうして改札口を強行突破したんだよ。名駅で無事に出られると思ってんの?」「マナカ持ってる、大丈夫。」「えーっ、それじゃどうしてさっきマナカ使わなかったの?」「んー、いいよ。きっと」何考えてんだ、こいつ。

とにかくいろいろ話しながら、阿久比駅で一緒に降りて、特急に乗り換えた。彼女は中国山東省出身らしい。今年の3月に来日して、ある店でウエイトレスをやっているということもわかった。「でもどうして河和口駅に居たの」「迷っちゃた」よくわからん?

そして名古屋駅で一緒に電車を降りた。「着いたよ。で、ここの改札どうするの?」彼女はマナカを取り出して、タッチすると、普通に改札口のゲートが開いた。えっ、そんなバカな。「ありがとバイバイ」と言って、手を振りながら人ごみに消えていった。何事もなかったように。はぁ、どういうことなんだ???

何だあいつは。中国から来た魔女だったのか。