世界は環境問題をどう見ているか(21)

今回の話題は、水素エネルギー社会の話です。昨年12月15日ついに出ましたね、トヨタ自動車燃料電池車”MIRAI”を発売しました。量産型のセダンタイプ燃料電池自動車としては、世界初です。世界中の注目を集めていることは言うまでもありませんが、さらに東京都が2020年の五輪に向けてこんな計画を発表しました。出典は米国Yahooです。

http://news.yahoo.com/tokyo-2020-olympic-village-hydrogen-powered-report-073151388.html

2010.1.5

Tokyo 2020 Olympic Village to be hydrogen-powered
2020年の東京五輪の選手村は、水素エネルギー社会へ

<本文要約>
2020年東京五輪の選手村は未来志向の“水素タウン”となる。水素から電気や湯を生産する。東京都政の計画立案者はこの夏季スポーツ祭典を催す機会を、いわゆる“クリーン”エネルギーのアピールの場としたいと考えていると、読売新聞は報じた。
そこには、ガスを宿泊施設、競技施設やレストラン送るための水素ステーションやパイプラインなどが建設される。選手を輸送するバスも水素を燃料として使い、それ専用のスタンドにて補給する。
水素エネルギーはクリーンなエネルギーに分類されるが、それは使用場面で副生成物として排出するのは水だけであるからである。しかしその水素はガスとしては自然からは得られず、化合物から抽出する必要がある。「技術課題は少なくないが、東京五輪はそれを実現するための大きなチャンスである。それは理想的な大規模実験となるはずである。」一橋大学橘川武郎教授は新聞紙面でそう語った。
「その選手村はスマートシティのモデルを意識づけることも狙いとしている。そして都市が持続可能な成長のために水素エネルギー使用を通じて何ができるかを国内外に示すべきである。」と先月発行された“東京長期ビジョン”の中にそう記載されている。

<コメント紹介>
コメントは全部で9件でした。そのうち6件紹介します。好意的な見方をされている方もいらっしゃいますが、批判的なコメントが多いです。

「多量の水素を製造する方法としては、天然ガスを熱分解するしかない。これは現代の技術では、スタント(スタントマンがやるような人目を引くための離れ業)以外の何物でもない。カーボンフットプリントについては、石炭を燃やしてエネルギーを得るのとそんなに変わらないだろ。これが新技術の典型だ。採算が取れるようになるまでが大変だし、環境にやさしい状況を実現するまでにはかなりの開発が必要なんだろ。現時点では“環境に悪影響を及ぼさない石炭”の架空物語として、話題になっているに過ぎないよ。」

「日本は、2020年東京五輪にて電気を消費することを口実に、原発を再稼働しないようにして欲しいね。電気エネルギーより大切なものがあるだろ、五輪会場へ招いた方々に提供する食事だよ。福島原発メルトダウンで漏れ出た放射性物質がわずかでも混じらないようにして欲しいよ。」

「いいね。さらなる人類の進歩のため、もっと燃料としての水素の使い道がたくさん必要だね。」

「水素は現時点では天然ガスから電気を使って製造されるけど、この方法が最もコスト的に有利ということを認識しないといけないね。私が思うに今後10〜20年の間に、水をベースにして水素を生み出す電池がきっと実現するよ。それまでは水素を使うことがCO2排出につながってしまうけどね。」

「へーっ、そして生成した水には福島原発から漏れ出た物も残ってるんじゃないの。」

「それで、水素ガスを得るために必要な莫大な量のエネルギーを、どうやって生み出すの?」

<解説>
 コメント読むと、結構痛いところを突いています。それは下記の2点です。
・水素を如何にして製造するか、低コストでかつCO2排出も少ない方法で、見通しはあるのか。
福島原発からの汚染水流出問題が未だに解決していない、それを自覚しているのか。
 水素の製造技術向上の見通しについては、私も正直言ってまだまだ厳しいと見ています。トヨタも東京都も勝算はどの程度あるのか、気になります。
そうは言っても現在の化石燃料はCO2発生源つまり地球温暖化を引き起こすことはよく知られていますし、可採年数も十分とは言えないようです。そして何と言っても日本は資源小国で、狭い国土に1億人以上住んで居ますから、エネルギー問題は切実です。豊かな国土と資源に恵まれシェール革命に湧いている米国とは大きく事情が異なります。日本が生き残るためには、他国が何と言おうと新たなエネルギー源の開発の手を緩めるわけには行かないでしょう。