世界は環境問題をどう見ているか(56)

Events That Led to Flint’s Water Crisis
フリント市水道危機に至るまでの出来事

 今回紹介するのは、あの米国史上最悪の水質事故と言われたフリント市のニュースです。最近のニューヨークタイムズ誌に、この事件の一部始終が時系列で体系的にわかりやすく紹介されていました。日本に住んでいるとこの事件のことをほとんど知らないか、または知っていたとしても断片的な情報しか得ていないと思います。
 今回は要約ではありません、全て記載します。

https://www.nytimes.com/interactive/2016/01/21/us/flint-lead-water-timeline.html



2014年4月25日
市はその水源をデトロイト市の水道施設からフロント川へ切り替えた。その切り替えの理由は、黒人の多いこの街が苦闘している財務状況悪化の解消であった。そして間もなく、水の色、味そして臭いについてのクレームが発生し始め、その報告が相次ぎ、細菌についての恐れが拡がった。

「フリント市の水は飲用としては安全です。」
とフリント市当局はアナウンスした。

2014年8,9月
市当局は、水道から大腸菌が検出されたことを受けて、水を煮沸することを促す通達を発行した。

2014年10月
ミシガン州環境基準局は、これらの現象は気温の低下、水道管の劣化および人口減少のために起こっているとの見解を示した。

「市は、水を煮沸するよう指示した勧告が再び問題を起こす可能性があると見て、それを抑えるための運用上の策を施した。」
ステフェン・ブッシュ、州環境基準局地区管理者

2014年10月
フリント市にあるゼネラルモータースの工場は市営の上水道を使っていたが、車の部品が腐食するとの理由で使用を中止した。

2015年1月
フリント市は、400万ドルの接続料支払いを後回しにして、まずはデトロイト市の水道施設に再び切り替ることを要請した。3週間後、州の災害対策担当管理者のジェリー・アンブロス氏はその要請を断った。

2015年2月
政府のメモによれば、当局は問題を軽視しており水の「公衆衛生へ脅威」は切迫しているわけではないとのことである。

「脅威となっている状況が十分に知らされていなかったことは明白である。そして苦情が頂点に達していることから、フリント市民がその水の様子(味、臭い、色)に不安を抱いていることも明白である。」

2015年2月18日
リー・アン・ウォルター氏の家で、飲料水から104ppbの鉛が検出される。ウォルター氏は環境保護庁(EPA)へ連絡する。少量の鉛でも子供の健康維持や発育の障害の原因になる可能性はある。EPAは15ppb以下なら何らかの対策を打つ必要がないとしており、公衆衛生学者らは水中のこの鉛濃度はもはや安全なレベルではないと語っている。

2015年2月26日
EPAの水質専門家と州環境基準局は住人の水サンプルに高濃度の鉛が検出されたことについて議論している。

2015年2月27日
EPAの水質専門家ミゲル・デル・トラル氏は語った。州の水質検査方法は甘い、これでは鉛の濃度をかなり低く見積もってしまう。

一軒の民家でかなり高濃度の鉛が検出されたことと、フリント市でプレフラッシングが行われていることから、市全体で検査結果よりも高いレベルの鉛汚染が進行しているのではないかとの懸念がある。

2015年3月3日
2回目の試験では、ウォルター氏の家で飲料水から397ppbの鉛が検出された。

2015年3月12日
フリント市がコンサルタントを委託しているウェオリア社のレポートによれば、市の水は州や連邦の基準を満たしている。ただ鉛の濃度に関する記述は特にされていない。

2015年5月6日
フリント市で、さらに二軒の民家から高濃度の鉛が検出された。

2015年7月2日
EPA長官はフリント市長に語った、「結論を出すのは早すぎるようだ。」と。これはEPA内部から漏れ聞こえてきた情報である。

2015年7月2日
リック・スナイダー州知事のチーフスタッフであるデニズ・ムッシュモア氏はe-メールに書かれた鉛汚染問題について憂慮を表明した、そしてフリント市の試験結果、血液検査そして州の対応について尋ねた。

2015年8月17日
今年2015年1〜6月の鉛濃度は11ppbだったことから、州環境基準局は管腐食の管理については楽観視していた。

2015年9月2日
市営水道の専門家でヴァージニア工科大学の教授でもあるマーク・エドワード氏は語った、水質が腐食性に傾いたため、水道への溶出が発生した。すぐその後、州環境基準局はその結論に対して話し合った。

2015年9月24〜25日
フリント市のハーレイ医療センターモナ・ハンナ・アティーシャ博士のグループは、子供らの血液から高濃度の鉛が検出されてから、フリント川の水の使用を中止するよう強く主張していた。しかし州当局は、水は安全だと主張していた。

「州環境基準局とDCHが感じているのは、フリント市では子供たちが鉛汚染問題にさらされているという深刻な課題に取り組んでいるが、当局は人口あたりの影響は低いと主張するような政争のタネに使おうとし、さらに責任を州に転嫁しようとしているということである。」

2015年9月28日
政府は、鉛問題について州環境基準局と連邦当局に要点を伝えた。

2015年10月1日
フリント市当局は、政府の疫学者がハンナ・アティーシャの博士により見出された高濃度の鉛について認証したことを受けて、住民に水道水を飲むことを中止するよう勧告した。州知事スナイダー氏はろ過フィルターの配布、学校での水質検査、そして水質と血液の検査をもっと広く行うよう指示した。

2015年10月16日
フリント市は、デトロイト市の水道施設に再び切り替えた。そしてろ過フィルターを通していない水を飲用、調理、入浴に伝ってはならないと住民へ伝えた。

2015年10月19日
州環境基準局責任者のダン・ワント氏は、彼のスタッフが腐食の管理について不適切な連邦手順書を使用したと報告した。

2015年10月21日
州知事スナイダー氏は、独立アドバイス特別委員会はフリント市の水の使用と試験方法を見直すと発表した。

2015年12月9日
フリント市は、新たな腐食の管理方法を追加した。

2015年12月14日
フリント市は、非常事態宣言を発令した。

2015年12月14日
特別委員会は、州環境基準局には説明責任があると語った。州の環境局の責任者のワント氏は辞任した。

「我々は、このような事態を招いた根本的な責任は、ミシガン州環境基準局にあると信じている。」

2016年1月5日
スナイダー氏はフリント市を含むジェネシー郡に非常事態宣言を発令した。
2016年1月16日
オバマ大統領は市とその周辺地域に非常事態宣言を発令し、連邦緊急事態管理庁へ500万ドルの助成をすることにした。

2016年1月20日
オバマ大統領は語った。「自分の親がその市に住んでいたら、我を忘れてしまうだろう。」そしてミシガン官邸は助成のための2,800万ドルを承認した。


出典、政府ミシガン州知事リック・スナイダー、ミシガン州政府監査役、米国環境保護
文責:ジェレミー・C.F.・リン、ジーン・ルッター、ヘーユーン・パク